Think of Fashion 021

長沢節 洋裁文化のイコン

講師:井上雅人(武庫川女子大学生活環境学部講師)

2014/10/11

長沢節は、戦後の日本を代表するスタイル画家であり、華やいだ少女たちを描いた中原淳一と対照的に、色気のある大人の女性と、線の細い男性を描いた。
スタイル画は、現在ではデザイン画と混同されてしまうが、写真印刷が不鮮明な時代にあって、写真以上にコレクションの昂奮を伝えることのできる、時代特有のメディアであった。
長沢は、「長沢はひとりでいい」と言われるくらい模倣され賞賛された時代の寵児であった。

しかし、あまり注目されることは無いが、長沢はスタイル画家以上に、当時のファッション界におけるプロデューサーとして活躍した。セツ・モードセミナーを創立して多くの学生を教えただけでなく、日本発のモードや既製服開発の中心となり、『an・an』などファッション雑誌の創刊に深く関わった。

はたして長沢を節点として、いかなるものたちが交叉したのか。戦後日本のファッションを考える。

   

井上 雅人(いのうえ・まさひと)
武庫川女子大学生活環境学部講師。服と本のセレクトショップ「コトバトフク」、ファッション専門ギャラリー「gallery110」運営スタッフ。専門は、日本近現代の物質生活史・デザイン史・ファッション史。武庫川女子大学生活環境学部講師。専門は近代日本史、デザイン史、ファッション史。
単著に『洋服と日本人』(廣済堂出版 2001)。近著に「自由・平等・コムデギャルソン」(西谷真理子編『相対性コムデギャルソン論』フィルムアート社2012)、「移動する身体」(横川公子編『生活の美学を探る』光生館2012)、「造形は衣服と建築から成っている 今和次郎の服装論」(『今和次郎と考現学』河出書房新社2012)など。現代美術作品に、「stilllife」シリーズ(CENTEREAST+井上雅人 2010-11)「竹林」(井上雅人研究室+森本真研究室 2012)