interview : ACUOD by CHANU

2017-18AW

ACUOD by CHANU

2017-18秋冬東京コレクションを振り返る会
公開インタビュー 3.

   
ACUOD by CHANUデザイナー 李 燦雨(Chanu)
聞き手:芳之内 史也

   
――前回の2017SSでブランドデビューと同時にランウェイデビューという形で、東京で発表したという流れですよね。

正確には3シーズン目でして、去年の4月にJFW-IFF(JFW International Fashion Fair)に参加させて頂いて、その翌月に個人の展示会とインスタレーションみたいなのを1人でやりました。それが自分の中では1stコレクションです。

――時間も限られていますので、なぜショーができたのかというところを中心に伺いたい思います。ファッションショーというのはとてもお金がかかるイベントなので、デビューブランドがなかなかすぐにはできるものではないのですが、Chanuさんはどういった具合にマネタイズというかお金を用意したのですか。

僕はよく金持ちの息子として報道されるのですが(笑)、実際は韓国の田舎生まれ、田舎育ちで、本当にただの田舎者です。でも、東京のことが好きで、東京で勉強をして、そこからご縁もいろいろつながって。東京でブランドをやりたいという気持ちがすごくあったので、その熱意を買ってくれる方々がいて、それでできるようになったと思います。

――具体的な方法論としては今回は支援枠というところで参加されていると思うんですが、その他にはクラウドファンディングなどを通じて資金を集めたという形になるのでしょうか。

ありがたいことに周りに親切な方々がたくさんいて、本当はお金がかかるところを無料で手伝ってくれたり、手弁当でやって頂いたりとか。そういうご縁がまた次の良いご縁につながっていくといった具合に、本当にご縁と情熱で成り立っています。

   

――前回のシーズンも見させて頂いたのですが、縫製とパターンのクオリティーが上がっているなと。オーガンジーの素材だったり、リアルのラビットファーが付いているものなど、クオリティーも上げてきたなという率直な感想があります。

実際のところ予算は少ないのですが良いものを作りたい気持ちはすごくあるので、クオリティーには妥協をしたくなくて、生地選びから縫製まですごくこだわっております。今回、良い縫製工場さんをご紹介して頂いたんです。パリコレクションで発表しているブランドばかりを縫っている所で、東京コレクションのブランドではうちらだけがやってもらっています。また、以前アンダーカバーにいらしたパタンナーさんともすごく仲良くなって、今回3分の2ぐらいのパターンを引いて頂きました。これもまたご縁で成り立っていると思います。

――最初、縫製工場さんからOKをもらうのは結構難しかったのではないですか。

工場の社長さんと最初にお会いしたときは、やっぱりちょっと怖かったですね(笑)。でも、最初は怖い顔をしていたんですが、会話の途中で表情が柔らかくなる瞬間があったんです。「先シーズンはどうやっていたの?」と質問されたときだったのですが、その頃は工場とのつながりもまだなかったので、僕が寝ないで縫ったり、先輩や後輩が協力してくれたり、自分たちで頑張りましたと答えた瞬間、社長の表情が柔らかくなって、そのときに認めてもらえたような気がします。

――誠意をひたすら伝え続けたんですね。

いつもそんな感じです。どなたにもありのままの情熱を伝えております。

   

――今回のショーではヒューマンビートボックスのパフォーマー(KAIRI)やアニメーションダンサー(GENDAI)が登場しましたが、お二人とも有名な方ですよね。お二人にもやっぱり情熱というか思いを伝えに行って、今回出てもらったんですか。

知り合いのフォトグラファーさんがあるイベントに招待してくれて、そこで面白い人が来ていますよということで紹介してもらいました。その頃、違うジャンルの方たちとコラボして面白いことをやりたいという気持ちが僕の中にあったので、今回お願いしました。

   

――Japan Fashion Weekに参加するのにはまず申請を出さないといけないと思いますが、初めから受かると思って出したのですか。

先ほども言ったように量産も何もできていなかったし、あるのは情熱だけで、本当にダメもとで審査に出したんです。そうしたらまさか受かってしまって、そのときはどうしようと思いました(笑)。でも、今ブランドを二人でやっているのですが、すごく信頼できる人だったのでそのときにちょっと相談して、それから一緒にやるようになりました。

――今年法人化もされてということですよね。

今年の2月末から法人化をしまして、株式会社アクオドとして東京ベースでやっていくつもりです。東京ブランドです!

――次回もショーをやられるつもりなんですか。

もちろん気持ちはやり続けたいと思っているんですけれども、まだ実は卸先が1個も決まっていなくて、今回の展示会次第といった感じです。本当に予算が少ない中でやっているので、気持ちとしてはやりたいですね。

――今回、バイヤーの反応も結構良かったみたいな話を伺ったのですが。

ありがたいことに、本当に恐縮なのですが、メディアの反響もすごく良くて、海外ですと南アフリカやロシアなどでも反響がありました。また、本当にありがたいことにシトウレイさんからもすごくいい反応を頂くことができ、バイヤーさんからもいくつか良い話を頂いているところです。

   
   

――今回のコレクションについて、当日時間の都合でお話できなかったことがございましたらご説明ください(後日メールにて回答)。
2017-18AWコレクションのテーマは「Break down walls. Zip up difference.」(壁を壊して、違いを繋げる)です。今世界の情勢は、トランプ大統領のアメリカやイギリスのEU脱退など、保護主義や自国第一主義が台頭し、多様性を否定して壁を作るという閉鎖的なマインドが潮流となっている。しかし、ACUODは、広義において壁を作って守りに入るのではなく、リスクを恐れずにジャンルや定義の壁を壊し、ACUODならではの解釈をプラスして、新しい価値観を生み出していきたい。多様性を尊重できる世界こそが平和を生み出す。そういう思いをテーマにしました。

ショーでは、ランウェイを黒と白に分け、黒と白の異なる二つの世界があって、その境界に見えない壁があるという設定にしました。黒と白のそれぞれの世界が交わらずに存在していて、あるとき新しい力によってその壁が壊れ、二つの世界が一つに合わさって新たな価値観が生まれるというストーリーを表現しました。
また、NYのCHRISHABANAさんやアーティストの澁谷忠臣さん、BeatBox日本チャンピオンのKAIRIさん、アニメーションダンスの世界チャンピオンGENDAIさんなど、異なるジャンルのアーティストととも積極的にコラボレーションをさせて頂きました。

   

オープニングのダンスは、白と黒の世界を唯一自由に行き来できるジョーカー(ACUOD)が、最後に壁を壊し、違いを繋げて新しい価値観を作るというストーリー設定によるものです。
また、ラストにトランプを撒く演出は、「Trump」という単語が、日本語ではトランプ全体を指しますが、英語ではトランプの中の「切り札・最後の手段」という意味なので、壁を造る方のTrump(すなわち大統領)ではなく、見えないジャンルの壁を壊す方のTrump(切り札・JOKER)にACUODがなっていく。二つの世界の壁を壊したJOKERこそがACUODであるという意志を示したものです。

アイテムの面では、フォーマルなコートとストリートのブルゾンがアシンメトリーに繋がったり、ファー・サテンなどの異素材との組み合わせなど、ACUODのフィルターを通してモードとストリートの新しいかっこよさを追求しました。シルエットはジェンダーを問わないオーバーサイズで、ボトムスはストレッチが入ったスキニーに、スカートやハーフパンツがジップで繋がり、単体でも合体させても着られるようになっています。
スウェットシャツは、袖口のジップを繋げると、それを着た2人が右手と左手で手を繋いでいるようにジップで袖を繋げることができるユニークな構造で、繋がりを表現しています。

ACUODは、壁を作るのではなく、壁を壊していく「切り札」として、これからも新しいことに挑み続けます。

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