column 006

篠原航平(駐在員/ライター)

上海で暮らし始めてまる6年になる。これは人でいうと、小学校に入学してから卒業するまでの期間にあたるわけで、その間に上海、そして中国も随分と成長した。街には高級車が行きかい、市中心にはラグジュアリーブランドのショップが軒を連ねるようになった。私の知人たちの暮らしぶりも、当時と比べ、目に見えて良くなっている。日本でも訪日する中国人観光客の旺盛な購買力に、育ち盛りの中国経済の力を実感できると思う。

勿論、中国(大陸)のアパレル市場もこの好況を大いに享受している。衣料品小売業の販売額は、成長に陰りが出てきてはいるが、この6年間毎年10%以上の成長を続けている。中国のアパレル品市場は、日本と同じく、婦人服の売上構成比が最も高い。
その婦人服のカテゴリーで、現在最も支持されているのはドメスティックブランドではない。デンマークのBESTSELLERによるVERO MODAというブランドである。同ブランドは日本には進出していないので馴染みがないと思うが、トレンドを適度に反映した女性らしいテイストで、価格は3,500円から100,000円未満、中国全土に1,500を超える店舗を展開している。ちなみに、VERO MODAに続くシェア第2位も同じく、BESTSELLERのONLYというブランドで、他にも韓国のE・LANDのものなどトップ10の内半分が海外ブランドで占められる。しかし残念なことにその中に日本のブランドは見られない。

日系アパレル企業の中国進出は、昨今の政治問題や日本市場の低迷などの影響もあってか、ここ数年は特に鳴りを潜めている。撤退するブランドも少なくない。中国でも「石の上にも三年」ということわざがあるが、先のBESTSELLERは1996年、E・LANDは1994年に中国進出を果たしている。苦しい時期もあったようだが、3年ではなく、それ以上の時間を経てようやく座っている石も温かくなってきたようである。
日系ブランドの商品力は当地のトップブランドと比較しても、全く遜色ない、というかむしろそれらを上回っているものが少なくない。座り続ける忍耐力があれば消費者に受け入れられる可能性は十分にあるはずだ。

篠原航平(駐在員/ライター)
2015/3