Think of Fashion 005

A BATHING APE®  1990年代、リミックスとリラックス

講師:依田健吾(批評家・研究者) 菊田琢也(文化学園大学・女子美術大学非常勤講師)

2013/2/24

ア・ベイシング・エイプ®(A BATHING APE®)は、ファッションのみならず映画、音楽など様々な分野と寄り添いながら、独特なストリート・カルチャーを築き上げてきた。特に洋服のタグなどに見られるサンプリングは、服好きを唸らせている。
同ブランドを軸に、「渋谷系」や「裏原宿」といった「センス重視」のリミックス文化がどのように相互に影響しあうことで、90年代の文化を形成していったのかについて考察する。

1993年、原宿の裏通り(NOWHERE)で始まったア・ベイシング・エイプ® の仕事は、 アンディ・ウォーホルを、あるいはNYのグラフティ・アートを彷彿とさせるかのようにポップにサンプリングを繰り返し、コンバースのスニーカーから迷彩のパターン、サントリーの自販機に至るまで、無数の「猿」をストリートに解き放っていった。
そうしたアイテムには「リミテッド」や「ワンオフ」という刻印が打たれ、それらを求め毎週末、若者たちの長蛇の列が出現したものだ。
そこには、「いま-ここ(NOW HERE)」でしか感じられないストリートの熱気が確かにあった。

   

講師プロフィール

依田 健吾(よだ・けんご)
1977年新潟県生まれ。文化女子大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。家政学修士。玉川大学在籍時にファッション研究という分野と出会い、大学院より研究を開始。専門は90年代のストリート・ファッション。人々がファッションを楽しむ自分を肯定し、同時に新しい出会いを見つけられるきっかけとなることを目指し執筆・評論活動を行っている。

菊田 琢也(きくた・たくや)
1979年山形生まれ。縫製業を営む両親のもと、布に囲まれた環境のなかで育つ。2003年筑波大学卒。在学時にファッション研究を志す。その後文化女子大学大学院博士後期課程を修了(被服環境学博士) 現在、文化学園大学非常勤講師、女子美術大学ライティング・アドバイザー。
近著に「装飾の排除から、過剰な装飾へ 「かわいい」から読み解くコムデ ギャルソン」(西谷真理子編『相対性コム デ ギャルソン論』フィルムアート社2012)、「やくしまるえつこの輪郭 素描される少女像」(青土社『ユリイカ』第43巻第13号2011)など。