Think of Fashion 008

コムデギャルソン論争とアンアン革命  DCブランドブームを考える

講師:井上雅人(武庫川女子大学生活環境学部講師)

2013/5/26

『アンアン』の1984年9月21日号に、「現代思想界をリードする吉本隆明の「ファッション」」という文章が見開きで掲載された。そして、これが掲載された後に、吉本隆明と埴谷雄高の間に「コム・デ・ギャルソン論争」と呼ばれる一連のやりとりがあった。

『アンアン』で、コム・デ・ギャルソンを着ている吉本を見つけた埴谷は、「「ぶったくり商品」のCM画像に、「現代思想界をリードする吉本隆明」がなってくれることに、吾国の高度資本主義は、まことに「後光」が射す思いを懐いたことでしょう」という「苦言」を呈した。
それにたいして吉本は、「貴方の『死霊』を出版している大出版社「講談社」も高価な貴方の『死霊』を販りつけて利益をぶったく」っていると応酬し、それから、お互いに「馬鹿」、「阿呆」と罵りあうことになった。

この論争にたいする評価は、非常に低い。
「コム・デ・ギャルソン論争」と言いながら、「コム・デ・ギャルソン」に関する議論は、やり取りの最後にならないと出て来ない。しかし85年に起きたこの論争は女性が洋服を作ることから買うことになった時期の、象徴的な事件でもあるのだ。
「コム・デ・ギャルソン論争」や「アンアン革命」という言葉を通して、「DCブランドブーム」をもたらした社会について考える。

   

講師プロフィール

井上 雅人(いのうえ・まさひと)
1974年東京生まれ。東京大学文学部歴史文化学科を卒業後、文化服装学院二部服装科と東京大学大学院人文社会系研究科に進学。現在、武庫川女子大学生活環境学部講師。専門は近代日本史、デザイン史、ファッション史。
単著に『洋服と日本人』(廣済堂出版 2001)。近著に「自由・平等・コムデギャルソン」(西谷真理子編『相対性コムデギャルソン論』フィルムアート社2012)、「移動する身体」(横川公子編『生活の美学を探る』光生館2012)、「造形は衣服と建築から成っている 今和次郎の服装論」(『今和次郎と考現学』河出書房新社2012)など。現代美術作品に、「stilllife」シリーズ(CENTEREAST+井上雅人 201011)「竹林」(井上雅人研究室+森本真研究室 2012)