マドレーヌ・ヴィオネは、バレンシアガをはじめ、数多くのデザイナーの賞賛と関心を集めてきたクチュリエールである。三宅一生はヴィオネを「静かなる革命者」と評している。では、彼女の革新性はどこにあるのか?
ヴィオネはバイアスカットの発案者としてファッション史に名を残しているが、注目したいのは、技術刷新の背後にある「身体とファッションとの関係性」に対する問題意識である。ヴィオネが解放の思想として追求したはずの“自然な=美しい身体”が女性美の規範として確立し現在に至るまで強固に機能することになるのだ。
彼女が活動した20世紀初頭から第二次世界大戦期までの社会背景を考慮しつつ、具体的な作品分析を通じて、彼女の創作基盤としてあった理想的身体像を探る。また同時代の美術、文学作品も取り上げ、ファッションと身体をめぐる同時代の理念と欲望を明らかにする。
※「クチュリエール」とは。服飾デザイナー。特に、パリのオートクチュール組合に加盟する高級服飾店のデザイナー。女性は「クチュリエール」 男性は「クチュリエ」
※「バイアスカット」とは布地を斜めに裁断して衣服に仕立てていく方法のこと。
講師プロフィール
井伊 あかり(いい・あかり):
1975年富山県生まれ。パリ第一大学DEA課程修了、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。ファッション雑誌の編集・翻訳を経て、跡見学園女子大学、早稲田大学非常勤講師。専門は服飾文化、表象文化論。
共著に『ファッション都市論』『ファッションは語りはじめた』『相対性コムデギャルソン論』、訳書に『モードの物語』がある。
1975年富山県生まれ。パリ第一大学DEA課程修了、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。ファッション雑誌の編集・翻訳を経て、跡見学園女子大学、早稲田大学非常勤講師。専門は服飾文化、表象文化論。
共著に『ファッション都市論』『ファッションは語りはじめた』『相対性コムデギャルソン論』、訳書に『モードの物語』がある。